さらに資格を得て
皮膚・排泄ケア認定看護師活動報告
皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC)は創傷ケア(Wound)・ストーマケア(Ostomy)・失禁ケア(Continence)の3領域を専門としています。
認定看護師とは、特定の看護分野において、専門的な看護技術と知識を用い、熟練したケアができる看護師のことで、日本看護協会により認定されています。
認定看護師とはどんな資格?
看護師として5年以上の実践経験を持ち、日本看護協会が定める615時間以上の認定看護師教育を修め、認定看護師認定審査に合格することで取得できる資格です。審査合格後は認定看護師としての活動と自己研鑽の実績を積み、5年ごとに資格を更新しています。
認定看護師はどんな活動をする看護師?
患者・家族によりよい看護を提供できるよう、認定看護分野の専門性を発揮しながら、認定看護師の3つの役割「実践・指導・相談」を果たして、看護の質の向上に努めています。
皮膚・排泄ケア認定看護師になったきっかけは?
私は新人看護師のころ、慢性呼吸不全のため長期に人工呼吸器を装着し、そのため鼻翼周囲にマスクによる潰瘍などのスキントラブルを起こしてしまった事例を何度も経験しました。潰瘍が治癒しないまま亡くなられた患者様もおり、もっと看護師として出来ることはなかったのかと、自分の知識のなさを痛感し、そして二度と同じ事例をつくりたくないと強く思うようになりました。
また、ストーケアについても何例か経験しましたが、
排泄ケアということで人間としての尊厳に関わることであり、治療だけでなく心に対するケアが重要です。しかし私自身、ストーマを造設される患者様に対する知識や経験が少なく患者様にどのように関わればよいか自信がありませんでした。そんな時、患者様が悩んでいるときに助けを求められ、信頼される皮膚・排泄ケア認定看護師の姿を見て、私も患者様の身体面・精神面苦痛を少しでも軽減して寄り添い、その人らしいライフスタイル確立への支援ができる看護師になりたいと考えるようになりました。
具体的な活動内容
創傷ケア
褥瘡予防・治療をはじめ、特に高齢な患者様の脆弱な皮膚に生じやすいスキントラブルに対するケア、正しいスキンケア方法について、院内をラウンドしアドバイスしています。
また、院内の褥瘡管理の質向上を目指し、昨年度より外科Drに加え、NST委員会メンバーと協働した褥瘡回診スタートしました。医師、看護師(NSTリンクナース)だけでなく、薬剤師・管理栄養士と共にラウンドを行うことで、体圧分散寝具の選択やポジショニング、スキンケアや局所ケアに限らず、栄養評価による必要カロリーの再検討や注入食の内容検討など、様々な視点からの提案が行えるようになってきました。
ストーマケア
当院では、現在ストーマ造設術は行っていませんが、ストーマ保有患者様は何名かいらっしゃるので、管理困難な状況、皮膚トラブルが生じた場合に対策を考えています
失禁ケア
オムツを着用し、長時間皮膚に排泄物が接触すると、皮膚に持続的な刺激が加わり皮膚障害が生じることがあります。特に下痢などの症状があれば、より皮膚への刺激が強く、皮膚障害が生じやすい状況になってしまうので、そのような場合の対処方法、スキンケア方法についてアドバイスしています。
また、褥瘡・スキントラブル保有患者、あるいはハイリスク患者に対し、専門的ケアが実践できる看護師を育成することを目的に、H28年度より院内での専門研修を計画、開催しています。
H30年度は「褥瘡・スキントラブル専門看護研修コース」として、4回の院内研修を行い、延べ53名の看護師、療養介助員、栄養士、薬剤士の方に参加していただきました。
今年度取り上げた研修テーマ
テーマ | |
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第1回 | スキンテア(皮膚裂創)ってなに?~予防とケアの実際~ |
第2回 | 創傷治癒過程と創傷ケアの実際 |
第3回 | 褥瘡ケアの実際~浅い褥瘡編~ |
第4回 | 褥瘡ケアの実際~深い褥瘡編~ |
その他、地域の方々を対象に公開講座として「スキンケア」をテーマに話をする機会もいただきました。医療従事者ではない方に対して話をするのは初めての体験で、どのように伝えれば理解してもらえるのか、試行錯誤することは多かったですが、この貴重な体験を通して、自分自身のプレゼンテーション力を成長させる重要な機会となりました。
感染管理認定看護師活動報告
感染管理認定看護師(CNIC)
認定看護師(CN)とは、その看護分野において専門性を高めた技術と知識を用いて実践できる看護師のことをいいます。病院内で特定の分野に関する、実践・指導・相談の3つの役割を果たすことで、医療の質の向上を図ることを役割としています。
私は、「看護師にとって感染対策の知識は必要不可欠だが、実践する看護ケアごとに何をしたら正解なのかわからない。どんな場面でも間違いのない判断ができ、知識を持って働きたい」という思いから感染対策に興味を持ち、感染管理認定看護師(CNIC)になろうと思いました。
感染活動理念
すべてのスタッフが感染対策に関する知識を持ち、感染予防に積極的に取り組むことで患者様やスタッフを感染から守ります。
- 院内感染対策マニュアルを遵守し、感染対策を適切に行うための教育を実施します。
- 院内感染のアウトブレイク(∗1)、あるいは異常発生をいち早く察知するためにサーベイランス(∗2)を行います。
- アウトブレイク発生時は、迅速な対応をし、速やかな終息を目指します。
- スタッフ自らが感染源とならないために、ワクチンの予防接種を積極的に推奨します。
- 患者様とスタッフに感染防止対策に必要な情報を積極的に提供します。
∗1 アウトブレイク(病気の感染が爆発的に広がること。)
∗2 サーベイランス(感染症などの動向について調査・監視を行うこと。)
活動内容
感染管理認定看護師として院内感染管理を担当し、病院内の感染対策を推進しています。
- 院内感染対策マニュアルの作成
現場で活用できる、分かりやすいマニュアル作成に努めています。 - 院内感染防止の教育
院内感染対策マニュアルを遵守し、感染防止対策に努めています。 - サーベイランス
サーベイランスを行うことにより感染率を把握し、原因追及、対策の介入を行っています。 - アウトブレイク対策
院内感染の集団発生の兆候を察知し、対策を立案、速やかな終息に努めます。 - 院内ラウンド
環境ラウンド:適切な感染対策が行われているか確認しています。
抗菌薬ラウンド:抗菌薬が適正に使用されているか継続的に確認しています。 - 職業感染対策
スタッフが感染源とならないため、ワクチンの予防接種を積極的に推奨しています。
来院される皆様へ
感染症は時と場所によって拡がりが変わります。当院は職員が感染予防に努力することに加え、来院される全ての皆様が感染予防を心がけ、必要な場所での手洗い、咳エチケットの実践にご協力くださいますようお願いいたします。
また、冬季においてインフルエンザ注意報・警報発令中は、ご家族以外の方のご面会を制限させていただく場合もございます。患者様の感染予防のためご協力をお願いいたします。
糖尿病療養指導士活動報告
~DMT(糖尿病チーム)のメンバーとして~
現在、当院には3名の糖尿病療養指導士(看護師2名、管理栄養士1名)がいます。多職種で構成されるDMT(糖尿病チーム)のメンバーとして日々糖尿病患者様とそのご家族に療養支援を行っています。チームの目標である「合併症のない自分らしい生活を」を念頭におき、自己管理に対する動機付けができ、QOLを高めるアプローチ、ライフスタイルに応じた個別の患者支援を実践しています。患者様に寄り添い、共に悩み、考え、共に学びより良い療養生活が送れるよう患者様と一緒に頑張っています。
外来部門では平成24年5月からフットケア外来を開始し、平成26年4月には糖尿病看護外来を立ち上げました。現在は、フットケア、糖尿病性腎症の患者様への療養指導をはじめ様々な問題を抱える患者様、家族への療養指導、支援を行っています。
フットケア用品
一緒に足の状態を確認し、自宅でのケアの方法や日常生活での注意点について話をしています。視力低下のある患者様や爪肥厚などで自身でのケアが難しい患者様のケアも実施しています。
看護師・栄養士が一緒に療養指導を行っている様子
指導に当たっては、患者様とどのような目標を設定するかを決め、出来そうな方法を一緒に考え実践できるよう、様々な方法を提案しています。
また、日ごろの生活を一緒に振り返り、食事療法、運動療法、薬物療法の内容を確認し患者様自身で、改善点が気付けるよう支援しています。
目標が達成できた時は一緒に喜び、出来なかったときは一緒に「無理だった」と肩を落とし、でもよくやった次はこうしてみよう!と患者様と共に日々奮闘しています。
入院患者様に対しては、DMTで作成したクリニカルパス(合併症検査入院3日間、教育入院パス1週間用・2週間用)を使用し指導を行っています。血糖コントロール目的で入院された患者様には、入院期間中に自身の日ごろの生活状況の振り返りができるよう支援しています。退院時には患者様自身が目標を設定し実践できるよう外来で支援を継続しています。
平成30年7月から、持続グルコースモニタリングシステムを導入し、グルコース値測定が15分毎に行えるため日内変動を見える化し療養指導に活用しています。
患者様の上腕にセンサーを貼付し、あとはリーダーをかざすだけで継続的なグルコース値変動が見れます
グラフにすることでより数値の変動が分かりやすくなります。
糖尿病教室
糖尿病教室、体験食は、新型コロナウイルス感染症対策により、現在は受付・開催していません。
毎月第2木曜日に開催しています。
カンバセーションマップを使って、インスリンの働き、食事療法、運動療法フットケアについて等参加者と一緒に楽しく会話を中心に進めています。
また3ケ月に1回は体験食とし、個々の指示カロリーの食事を楽しんでもらい、自宅での食事内容の参考にしていただいています。
栄養士からの説明の後みんなで一緒に体験食
マップを覗き込みながら会話を進めている様子
難病看護学会認定看護師活動報告
高松医療センターは難病の拠点病院としてALS等の難病とともに歩む患者さんの医療・介護を提供しています。私は疾患の理解だけでなく、症状緩和やQOL向上に向けたケア・リハビリ・社会的資源を活用した包括的支援など専門的な知識を持ち関わりたいと考え難病看護学会認定看護師を取得しました。患者さんは症状や訴えを話すことができず、コミュニケーションの方法や合図は様々で、透明文字盤を使用して意志疎通を図ります。患者様一人ひとりの目の動きやまばたきの合図に対して個別性に応じた援助を実践しています。この合図を見逃さない観察が重要であり難病看護に関わる看護師として必要なスキルだと思います。そして、その人に合わせたコミュニケーションスキルを磨き観察することが大切だと考えています。
また患者さんの中にはTLS:閉じ込め症候群の状態で眼の動きが出来ず意志疎通困難な患者様もいます。痛みや痒みなどを表出できないため日々の観察が重要で、バイタルサインやモニターの状況を確認し早期に異常の有無に気づけるよう注意しています。私は日々そのようなことに難しさを感じながらも寄りそった看護をすることで学びを深めています。
難病は同じ疾患であっても個別性があり疾患の進行が様々です。生じている問題をアセスメントし発症期や進行期などその過程に応じた適切な看護支援を実施することが求められます。また人工呼吸器を装着された患者さんが大半であり勤務中は呼吸の状態・機器の作動状況など常に注意して観察しています。
そして難病看護学会認定看護師を取得したことで今まで以上にリーダーシップを発揮し、スタッフからの信頼を得るように意識するようになりました。医師や栄養師、リハビリスタッフといった多職種間の連携を通して支援を充実させ、より良い療養生活が送れるよう個別性に応じた看護の提供や、研修を企画し難病看護の質向上に努めていきたいと思います。そのためにも、日々患者さんとの関わりを大切にしながら、信頼関係を築いていきたいと考え奮闘中です。
毎月の検討会では難病学会認定看護師3名が集まり、ワイワイ・ガヤガヤ、難病看護を語っています。
看護師特定行為研修修了者としての活動報告
私は平成29年6月1日から7か月間、四国こどもとおとなの医療センターで看護師の特定行為研修を受講しました。看護師特定行為とは、厚生労働省が定めた研修を受け、それを修了した看護師が医師の作成した手順書に沿って特定行為を行うものです。その行為には21区分38行為があり、私は呼吸器関連の『気管チューブの位置調整』と『気管カニューレの交換』について、基礎から最新の医療の動向について学びました。組織で貢献できる看護師として“患者さんの状況に応じて迅速かつ包括的アセスメントができ、患者さんの権利を常に認識し、安全な看護実践ができる”“多職種と連携し、効果的に協働することができる”というチーム医療のキーパーソンとしての役割が求められます。
現在、研修を経て特定行為の実践を行っており、患者さんに安全・安心な技術を提供できるように努めています。教育活動としては、看護師を対象に呼吸のフィジカルアセスメントの研修を行い、苦手意識の克服や知識を深めるなど、看護の質向上に向け学習を行っています。療養介助員に対して人工呼吸器装着時の嚥下のメカニズムを理解した食事介助について研修も行っています。
今後も患者さんを中心とした「治療」と「生活」両面を支えられる看護師として自己研鑽を重ね、特定行為研修での学びを活かしていきたいです。そして看護師特定行為研修を多くの看護師に受講していただき、一緒により良い看護をめざしていきたいと思います。
認知症ケア専門士活動報告
認知症ケア専門士とは、認知症ケアに対する学識と技能、および倫理観を備えた専門技術士であり、我が国における認知症ケア技術の向上ならびに保健・福祉に貢献することを目的に設立された一般社団法人認知症ケア学会認定の資格です。
認知症ケア専門士
私は、祖母が認知症を発症し家族としてどのように関われば良いかが分かりませんでした。また、高齢化が進み当院でも認知症を有する患者さんも多く入院されています。祖母や患者さんへの関わり方、ケアについて学習したいと思い資格を取りました。
活動内容
認知症の患者さんとご家族が安心して入院生活、検査や治療が受けられる環境を提供することが大切です。認知症の患者さんは入院という大きな環境変化に適応できず、せん妄や行動・心理症状が誘発されることは容易にあるため、適切なケアを行う必要があります。患者さん一つひとつの発言や行動の意味を考え個別性にあったケアを提供することで安心した入院生活を送ることができます。私は、病棟スタッフと患者さんの症状に応じたケアを実践すると共に、ケアについてのカンファレンスでアドバイスを行っています。現在は病棟のみの活動がメインとなっているため、今後は病院全体で多職種と連携をとり認知症ケアが提供できるような活動を展開していきたいと思います。
抗酸菌症エキスパートとしての活動報告
結核は徐々に減少傾向にあるとはいえ、香川県で年間130~140名の発症があり、まだまだ昔の病気ではありません。当院は国立病院機構の政策医療である結核患者さんの受け入れを20床のユニット病床で行い、香川県の最終拠点病院としての役割を担っています。県内において抗酸菌症エキスパートの資格を有する医療従事者が少ないなか、地域医療連携室に所属し、結核(疑い)の患者さんの受け入れや相談の電話対応にあたっています。そこで抗酸菌症エキスパートとして、ご相談いただいた医療機関や施設等に正しい知識を持って、患者さんの対応に当たれるようアドバイスを行い、スムーズな受け入れが行えるよう日々務めています。
また、感染症対策は社会的防衛のイメージが先立ち、患者さんもご家族も不安を抱えての入院となるため、環境や生活に極力影響がでないように配慮しています。入院中には、看護師主導によるDOTS(直接監視下短期化学療法)の指導を徹底し、抗結核薬の確実な服用ができるよう支援を行っています。また退院後も患者さんが安心して過ごせるよう、患者さんやご家族はもとより、保健所や連携先の医療機関、薬局や在宅医療関係者、ケアマネージャー、社会福祉施設等への情報提供を行っています。月1回のDOTSカンファレンスでは、地域の保健師、外来・病棟看護師、薬剤師、呼吸器内科医師と患者様の情報共有を行い、地域医療連携強化を図っています。
これからも抗酸菌症エキスパートの資格を生かし、結核に罹患した患者さん・ご家族、地域の医療機関の方々が「相談しやすい」「信頼できる」といった病院の一端を担えるよう、取り組んでいきたいと思います。